オーナー通信

2009年10月オーナー通信
10月16日発行
管理を委託いただいているオーナー様へ発行しているオーナー通信のバックナンバーです。 法令等については当時の情報となっています。

秋涼爽快の候、いかがお過ごしでしょうか。

私たち賃貸事業部では通常業務に加え、年明けの稼動期に向けての営業対策も急ぎ進めさせていただいております。

さて、当社では「賃貸管理にまつわるホットなニュースをお伝えすること」「新しい商品やアイディアをご提案すること」を目的に、毎月、定期報告書に添えて本紙をお送りしています。

今回は、更新料訴訟にまつわるお話をさせていただきます。

お忙しい中とは存じますが、ご高覧いただければ幸いです。


 

更新料訴訟・貸主敗訴後の対策

 

大阪高裁 更新料訴訟判決の概要

はじめに「更新料は消費者の利益を一方的に害し、無効」という判断が下された、8月27日の大阪高裁判決について、そのポイントをお伝えいたします(日本賃貸住宅管理協会メールマガジンより抜粋)。

 

1.更新料の法的性質

  • 家主は、本件更新料は、賃貸人による更新拒絶権放棄の対価(紛争解決金)、賃借権強化の対価、賃料補充の複合的性質を有していると主張する。
  • 他人に賃貸する居住用物件の賃貸借では、更新拒絶は想定しにくいし、正当事由があると認められる場合でなければ更新拒絶ができないから、更新料が一般的に賃貸人による更新拒絶権放棄の対価の性質を持つとは説明できない。契約条項の定め方から、家主も、更新料が更新拒絶権放棄の対価であるとは考えていなかったといえる。
  • 本件賃貸借契約では、合意更新により解約申し入れが制限されることにより、賃借権が強化される程度はほぼ無視してよいから、賃借権強化の対価として説明することも難しい。
  • 本件で更新料は、後払いされる家賃の性質を持たないし、前払い家賃として説明することもできない。契約条項を見ても、更新料の説明は全くされていないし、重要事項説明書の記載や仲介業者からの説明も見られない。したがって双方に、更新料は単なる契約更新時に支払われる金銭という以上の認識はなく、法律的な意味で賃料として認識していたとはいえないから、本件では、更新料が賃料の補充の性質を持っているとはいえない。

 

2.本件更新料約定の消費者契約法10条前段該当性

  • 更新契約は新たな賃貸借契約として消費者契約法の適用を受け、賃借人は更新料10万円を支払わなければならないとされているから、民法の任意規定の適用される場合に比べて賃借人の義務が加重されている。したがって、消費者契約法10条前段に該当する。

 

3.本件更新料約定の消費者契約法10条後段該当性

  • 更新料約定の内容は、期間が1年間という短期間なのに、更新料の金額が10万円で月払賃料の額4万5千円と対比すると、かなり高額である。
  • 本件では更新拒絶権放棄の対価、賃借権強化の対価、賃料の補充の性質は認められず、その目的、法的根拠、性質は明確に説明されておらず、本件更新料約定が維持されるべき積極的、合理的な根拠を見出すことは、困難である。むしろ、客観的には、賃借人となろうとする人に経済的な出捐が少ないかのような印象を与えて契約締結を誘引する役目を果たすものでしかない。
  • 契約条項の定め方は、更新拒絶に正当事由を要する借地借家法28条の要件の記載が避けられたまま、賃借人に更新料の支払いが義務づけられている。同条による法定更新は強行規定であるのに、賃貸人側が説明したことはない。そうすると、契約条項は、客観的には情報収集力が乏しい賃借人から、借地借家法の強行規定の存在から目を逸らさせる面がある。
  • 賃借人は、借地借家法上の強行規定の存在について十分認識することができないままであったから、本件約定が効力を生ずる場合と他の取引条件とを自由に比較衡量する機会は十分に与えられておらず、実質的に対等にまた自由に取引条件を検討したということはできない。
  • 以上の検討によれば、本件更新料約定は、「民法1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」といえる。

 

判決に対する解釈

 続いて、この判決に対する専門家等の判断を簡単にご紹介いたします。

 

○東京都宅地建物取引業協会 深沢総合法律事務所

※一部抜粋
「気になるのは今回の判決が事例判断を越えて更新一般についても判示しているように見える点です。しかし、判決は基本的に具体的な事例についてなされるものです。今回問題とされた事例の契約内容は、かなり賃借人にとって過酷な内容であり、今回の判例をもって、今後更新料を巡る具体的事例において、全ての更新料特約一般が無効とされることはないはずです。

 

○国土交通省(※日刊不動産経済通信記事一部抜粋)

「国土交通省では『個別の事案であり、一般的に更新料が駄目だと指摘されたわけではない』と受け止める。国交省では、『契約の内容を説明し、お互い納得して契約することが重要』と指摘する。」

 

今後の対策

以上、高裁の判決要旨及び専門家等の意見をふまえ、今後の対策として現段階では2案考えられます。

 

【第1案】更新料の内容を説明する文書を契約前に交付し、賃借人に署名押印していただく

「更新料は賃料補充の性格を帯びていること」、「法定更新という法的保護はあるが、更新料の支払いが認められないのであれば、家賃の増額に応じていただくか、更新料のない他物件を選んでいただくということになるということ」という2点を文書で説明し、合意した旨を証明するため、確認書等に署名押印していだたく、という手法です。

この案のデメリットとしては、①今後、更新料そのものが一般的に無効となってしまった場合は対処できない怖れがある、②契約時に交わす書類は今でも非常に多いが、さらに増やすこととなってしまう、などが挙げられます。

 

【第2案】定期借家契約を締結し、期間満了後は再契約料をいただく

新規契約時から、「問題がなければ再契約を行う」ことを前提に定期借家契約を締結し、当初契約期間が満了したら、再契約料を頂戴し、再度、定期借家契約を締結する、という手法です。

今回、問題となっているのは普通賃貸借契約における更新料です。定期借家契約は新借地借家法で認められた契約形態であり、再契約をする、しないは自由ですので、「法定更新」という考え方は適用されません。

定期借家契約を締結すれば、家賃未収の常習者、トラブルメーカー等は合法的に退去していただくこともできますので、今後の賃貸経営では積極的に取り入れていくべき手法だと考えます。

この案のデメリットとしては、定期借家契約は家主側の権利が強化されるため、嫌がる賃借人もいる(とりわけ社宅代行会社を間に入れた法人は、ほぼすべて定期借家契約はNGとされています)ということが挙げられます。

 

 ところで、現段階では特に賃借人様から「更新料は無効なのではないか」という問題提起はされておりません。問題提起がなされた場合は「更新料一般が無効とされたわけではなく、今回の訴訟案件が賃借人に非常に不利な約定となっていたため無効とされた」とお伝えする体制をとっております。したがって、あまり過剰に対応しすぎますと、逆効果になるという可能性もあります。

以上のことから、当社では第1案、第2案双方の準備を整えつつ、もうしばらく様子を観察していきたいというように考えております。

本件につき、ご質問やご意見等、頂戴できましたら、誠に幸いです。

 


今回は以上とさせていただきます。

朝晩はめっきり寒くなってまいりましたので、どうぞくれぐれもご自愛ください。

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